誰もいない部屋。
雨音だけが響く。
外は曇天。
届く声は遠く。
この世でたった一人、残されたような。
(なぁ、銀時)
(お前は、覚えているだろうか)
伏せた目蓋の裏に、今もはっきりと映る。
遮られた視界。
飛び散る真紅。
火薬の臭い。
命の散る音。
それらの混じった、雨の匂い。
すべて、自分たちがもたらしたもの。
(許されたいとは、思わない)
(けれど、守りたいものが、ある)
あの時、かつての友と合間見えた瞬間。
心をよぎったのは、紛れもない喜びという感情で。
刃が自らの喉元に突き付けられているという現実さえ、微塵にもそれを翳らせるものではなかった。
(あの混乱の中、はぐれたことを、どれだけ後悔しただろう)
(生きてさえいてくれれば、どんな姿になっていてもかまわない)
(そう、強く念じてさえいたのだ)
望んだ形での再会ではなかったけれど。
それでも、嬉しかったのだと。
あの時はそれだけ、伝われば、それで充分だった。
(白夜叉)
(銀時)
(どちらも、お前の姿)
どれだけ姿が変わっていても。
その本質は何も変わらない。
(いつだって、痛々しいほどに、すべてのものを守ろうとする)
(自分の身がどれほど真紅に染まろうと)
(お前だけは、変わらないのだろう)
それならば、自分にできることは。
いつまでも、この場所を守ること。
彼と同じものを見。
同じものを守り。
そして、同じように、生きること。
(それで、良いだろうか)
声無く呼ぶ名。
雨音がすべてを吸い込む。
そうして、その雨が止む頃には。
水鏡が、世を映す。
目映いほどに。
【Fin.】
後書
初の桂です
しかも独白です!
自分の世界に入っています!
Yさん!
こんな感じでいいでしょうか。。。?
ちなみに、この題名は、お題サイト、capriccioさまから頂きました
ありがとうございます。。。!
2008/02/24 Wrote
2008/03/05 UP
2008/03/17 再UP
Back