わけもなく、怒りが込み上げる時。
高揚した気持ちを抑えきれなくなる時。
感情の高ぶりをぶつける術を見失った時。
そんな、苦しいと素直に言い出せない時。
空を見上げるように、ごく自然に、アイツの顔を思い浮かべることがある。
ふと、それに気付いた。
呼吸をすることが、生きている証なのだと、改めて気付く、子供のように。
(だせェ)
そんなことを正直に言えば、恐らく馬鹿にされるだろうけれど。
縁側に腰掛け。
いつものように、サボりを決め込み。
どこまでも続く、透き通る青い空を見上げ。
それでも、脳裏を過ぎるのは、アイツの存在なのだと。
「……」
溜息も漏れるというものだ。
何故、アイツなのか。
アイツでなければならないと、心は定めてしまったのか。
軽やかな動き。
しなやかな肢体。
その力で相手を屈することに、なんの躊躇いも持たない、強い瞳。
(一度でいい)
(その強い瞳で、俺を視て欲しい)
(たった、一度でいい)
(俺だけを、心に留めて欲しい)
多くは望まない。
けれど、それが叶うだけで。
(俺は命尽きるまで、刀を振るうことができるんでさァ)
どれほどの血潮を浴びても。
行く先に待つのが闇だとわかっていても。
あの強さが自分を支えるのだと。
(弱く…なっちまったぜィ)
女の為に、命を張る。
女の為に、見得を張る。
女の為に、仲間をも裏切る。
馬鹿らしいと思っていた。
弱さを隠す為の方便だと思っていた。
だから、憎たらしい副長の姿勢が余計に許せなくて。
理解なぞ生涯できないと、思っていた。
(俺も落ちたもんだねィ…)
苦笑が漏れる。
散々刀を振るい、血を流してきた。
今更、赦しだとか、救いだとか。
(そんなもんは、信じられねェんでさァ)
そんなものはいらない。
ただ、手を取り合い。
背中を合わせ。
共に、在れば。
そして、天を見上げることができるのなら。
それが赦されるのなら。
(それが、いい)
きっとこの遣り切れない、抑え切れない想いは、少しも治らないだろうけれど。
けれど、隣にアイツさえいれば。
(それで、いい…)
【Fin.】
後書代わりの戯言
なんとも切ない、沖→神です
この後どうなるかは、総悟の努力次第でしょうね(笑)
今回も、イメージの元となるイラストがあります。
【読書とジャンプ】を更新されている、むらきかずは様の描かれたイラストです。
こちらを見て頂けると、より一層愛が深まるのではないかと思います。
むらきかずは様
読書とジャンプ
宜しければ感想等頂ければ幸いです!
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2009/09/05 Wrote
2009/09/08 UP
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