嬉々として出かけていく、背中をただ見つめる。
いつもいつも、ただ背中を見つめるだけ。
彼は振り返ることなく。
自分が、どんな表情をしているか、気付いてはいない。
(ばぁか)
仮にも局長に対して言う台詞ではないが、紛れもなくそれは本音。
これは慕わしいという心から来るものではない。
単なる、独占欲に過ぎない。
それもひどく子供じみた、醜い。
「莫迦は私、かぁ…」
ぼんやりと外を見やりながら呟くと、背中に人の気配を感じた。
これはいつもの気配。
憎たらしい。
いつまでも届かない。
近藤さんが、誰よりも信頼し、背中を預ける、存在。
「何か用ですか」
振り返らずに声を投げかける。
すとん、と自分の後ろに腰を下ろしながら、近藤さんか、と呟く言葉は、聞こえなかったことにする。
問いかけに対して問いかけを返す。
自分たちはいつまでも、そうやって距離を縮めない。
それが必要ないと思っているからだ。
(鬼の副長)
二つ名が羨ましいとは思わない。
思っても仕方がないから。
彼は男で、自分は女で。
振るう刀の色も違う。
そういう意味で自分と彼を、近藤さんが比べることはしない。
ここで、唯一の異性であること。
それを負い目に感じたことはないけれど。
彼は、自分のことをどう思っているのだろか。
「…土方さん」
「ん」
視線は合わせないまま。
けれど、意識はお互いに同じ方向を向いている。
きっと。
「近藤さんは…また駄目ですかね」
「…多分な」
くす、と笑みが漏れる。
この距離でいいのかもしれない。
この距離が、心地いいのかもしれない。
ずっと、背中合わせで。
視線を合わせず。
けれど、同じ空気を、吸う。
(ただひとり、の為に)
たったひとり、守りたい人の為に。
その為に。
(志を、共に)
【Fin.】
後書代わりの戯言
初の真選組初期設定SSです
一応土沖です
…一応(苦笑)
今回の作品はかずはさまリクエストのものになります
頑張って書いてみました!(笑)
およそタイトルと中身がふさわしくないような気もしますが、
今回はなんとなく動かしたくなかった、んですよね…
何故でしょうね(苦笑)
さて、今回も、イメージの元となるイラストがあります
【読書とジャンプ】を更新されている、むらきかずは様の描かれたイラストです
色塗りはいつも素敵な色塗りをされているハコさまです
こちらを見て頂けると、より一層愛が深まるのではないかと思います
むらきかずは様
読書とジャンプ
ハコ様
サクラバコ様
宜しければ感想等頂ければ幸いです!
web clap
2009/09/18 Wrote
2009/10/12 UP
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