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影踏



生死を左右する腕
支える躰
染まらない心
志は変わらず



遠くで、祭囃子が聴こえる。
屯所の近所に神社がある為か。
横になっているというのに、賑やかな様子が手に取るようにわかる。
アイマスクの向こうに、微かに届く灯。


『…姉上!』
『どうしたの』


優しい姉の手に引かれ、何度と無く縁日へ足を運んだ。
次第にそれが気恥ずかしくなり。
いつしか、道場仲間と共に行くようになっていた。
姉の、少し哀しそうな、淋しそうな笑みが気になりはしたが。
それでも、素直になることができなくて。


(今も昔も変わらねぇ…ガキでさァ)


京から江戸へ。
芋侍が、武士へ。
名前は変われども、中身は変わらない。
粋がっているだけの、田舎武士だ。
大切なものさえ、まともに守ることの出来ない。


「おい、コラ。なにサボってやがる」


ふ、と暗くなったかと思えば、聞き覚えのある声が降ってきた。
今一番聞きたくない声だ。
いつものように軽く無視をしていると、脇腹を刺された。
もちろん、鞘で。


(いっそ、刺し貫いてくれィ)


そうすれば、見たくないものは見なくても済む。
過去を変えることができないのなら。
この先の、いきかたを。


「近藤さんが呼んでるぞ」
「…近藤さんが?」


なんだろう、と思いながら、アイマスクを首まで下げる。
視界に入る夕陽が目に痛い。
いつの間にこんな時間になっていたのだろう。


「綺麗な夕陽でさァ」
「さっさと行けぇぇ!!」


遠く、夢うつつに聞いた祭囃子が止まない。
境内を照らす提灯の灯が垣間見える。
これは、現実の光景。
自分は今、あの時の道場仲間と共に。
たった一人の姉を置いて。
そして、今はとうとう一人になってしまった。
局長室へ向かう足取りが重たい。


(…姉上、)


呼びかけに、返る声は、無い。



いきかたは変わらず
けれど、環境だけが、変わる
追っても踏むことの出来ない
自分の影法師のように
いつまでも届かない



【Fin.】



後書


しつこくてすみません
相変わらず総悟大好きです!
かっこいいです!
Sなのに打たれ弱いところが大好きです〜。。。!



2007/09/22 Wrote
2007/09/22 UP
2008/03/17 再UP




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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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