過去を振り返ることは好きじゃない。
だから、自分の振る舞いに悔いは残さないようにしている。
誰を斬り捨てても。
誰を置いても。
(忘れない)
今まで起こったこと。
これから起こること、すべて。
なにひとつ。
欠けることなく。
(あの日からずっと)
自分はずっと独りで生きていくのだと思っていた。
誰かと支えあって生きるには、余りにも多くのものを失いすぎた。
(何食わぬ顔をして)
(逃げ続けて)
(笑いあって)
それもきっと、ひとつの生き方なのだろうと思う。
けれど、そんな生き方は…二つ名が赦さなかった。
(…白夜叉)
夜叉のように振舞う、白いバケモノ。
護るべきものを護る為に、刀を振るい続け。
いつしかその刀が血に塗れ使い物にならなくなっても。
延々、振るい続け。
(気付いちまった)
鈍い切れ味のを持つ筈の刀が、重たくて。
もう腕さえ上げることができない。
そう、思う頃には、引き返せる場所は何処にもなかった。
(ただ、前へ前へ)
ただ、一途に。
盲目的に。
(信仰していた)
光を乞うように。
温もりを求めるように。
ただ、思っていた。
素直に。
仲間と共に、笑いあう日々の中で。
それだけが大切にしたいモノで。
(絆、と呼べるものがあるのなら…あれはきっとそうだった)
失った瞬間のことは正直覚えていない。
ただ覚えているのは…痛みだけ。
強く、鋭い心の痛み。
(自分だけが、残った)
気付けば、誰も残っていなかった。
あるのはただ、抜け殻となったこの身。
自らの焔に焼き尽くされて。
(もう、何もない)
きっと、もう、何も手に入らない。
護るべきものを失い。
支えあうべきものを失い。
このままきっと、何に対しても。
心を動かすことなく、生きていくのだろう。
(生きて、しまう)
ぼんやりと空を眺め。
疼く傷痕を放置して。
――ただ、生きていく。
【Fin.】
後書代わりの戯言
書いてみました、白夜叉でもない、銀さんでもない、坂田銀時、という人
まだ彼は、万事屋も商っていない頃だと思います
まだお登勢さんとも、出逢っていない頃の、
ただ無気力に、生き続けている頃のイメージで書いてみました
まぁ…たまには、こんな雰囲気も良いのではないでしょうか(苦笑)
今回も、イメージの元となるイラストがあります。
【読書とジャンプ】を更新されている、むらきかずは様の描かれたイラストです。
こちらを見て頂けると、より一層愛が深まるのではないかと思います。
色付けをされたのは、深谷ミロク様です。
むらきかずは様
読書とジャンプ
宜しければ感想等頂ければ幸いです!
web clap
2009/08/15 Wrote
2009/08/25 UP
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