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例えばこの声が届かないとしても



近づきすぎたら、壊れてしまう
名付けられた関係の
枠に嵌りたくない
特別でも
そうではなくても



いつもと変わらない光景。
いつもと変わらない日常。
ファイルを胸に抱え、不安で堪らなくても。


(それが、ここでは日常さ)


きっと、ラビはそう言うのだろう。
淡々と。
明るくも聞こえる、その声で。


「どうした」
「…ユウ」


顔を上げると、少し不機嫌そうなユウが立っていた。
いつものように、眉間に皺を寄せて。


「ラビなら、任務で…」
「知ってる」


途中で遮られ、では何故ここに、と視線だけで問う。
それが気に障ったのか、肩を竦め、私に逢いに来たのだ、告げられた。
ラビが任務でいない時、ユウはこうしてよく、私に逢いに来る。
最初は理由がわからなくて戸惑ったけれど。
今は、私の救いともなっていて。


「…ありがとう、ユウ」
「なんのことだ」
「うぅん、なんでもないの。…ありがとう」


こうしてほんの少し、心が軽くなる。
それは間違いなく、ユウのおかげ。
不安で仕方が無い時も。
泣きたくなる時も。
いつも、ユウがいてくれる。


(ラビ…)


いつだって、私が追うだけで、置いていかれてばかりで。
なのに、何も言わなくて。
私がついてくると思っていて。


(ラビの馬鹿)


ふと、気付くとユウが傍にいる。
何も言わないけど、ただ、傍にいる。
そうして私は、それに縋りそうになる。


『お前が、泣いてるんじゃないかと思って』


たった一度だけ、聞かせてくれた本音。
あれから二度と聞かせてはくれなかったけれど。
優しいユウ。
不器用なユウ。
いつだって、私のことを考えてくれている。
それでも私は、ラビを想うことを、待つことを、止められない。


「ユウ、今時間ある?」
「…なんだ」
「私、今から休憩なのね。一人で食堂に行くのも寂しいから、一緒に来てくれる?」


本当は薄々気付いてはいる。
ユウが、誰を想っているのか。
けれど私はずるいから。
こうして、何も気付かない振りをして。
そうして、彼に甘えている。


(待っていて)


いつか、時が来る前に。
きっと答えは出すから…。



【Fin.】


後書


やっと書き上がりました
雨さん原案(笑)の【ラビと付き合っているけれども
ユウにも心惹かれている】夢小説。。。です
結構かかりましたね。。。


夢小説の醍醐味でもある、名前を呼ぶ、がないのですが
これが今の私の精一杯。。。(笑)
楽しんで書くことが出来ました
雨さん、ありがとう!



2008/05/10 Wrote
2008/05/22 UP
2008/10/06 加筆修正



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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