Index  Menu  Main  Novel(SAIYUKI)  Novel(WJ/GAME)  Novel(etc) 

Paganism Cross



その名は以前から耳にしていた
AKUMAを退治するエクソシスト
教団には戻らない、エクソシスト
エクソシストらしくない、エクソシスト
だから、ひっそり、異端のエクソシスト、なんて呼んでいた
本当は、自分こそ異端であるとわかっていたけれど
そう呼ばずにはいられなくて
ただそれを、本人が知っていたのかどうかは、わからない



◇ ◇ ◇



アレン、という少年と付き合うようになって、以前より頻繁にその名前を耳にするようになった。
どうやら行動を共にしていたらしいが、それが師弟関係からなのか。
それとも単なる下僕としてなのか、話を聞くだけでは判断がつかなかった。


「師匠は、…」


クロス・マリアンという人物がどんな人物だったのか、と聞くと、アレンは決まって深い溜息を漏らした。
その様子があまりに重々しくて、思わず苦笑を漏らしてしまう。


「ラビ、そんな風に笑っていますけどね。実際に師匠に逢うと笑えないですよ」
「う…」


思わず、言葉に詰まってしまった。
アレンの告げる内容が、真に迫っていたからじゃない。
自分の位置を、測りかねたからだ。
こんな時、いつも考えずにはいられない。
自分の居場所というもの。
仲間というもの。
ブックマンという、立場。
自分の名前は確かにラビという名前だけれど。
それは、エクソシストとしての仮面を被った上での名前で。


「ラビ?」
「…なんでもないさ」


それだって、自分がたまたまイノセンスと適合したから生まれたもので。
もしかしたら、この少年とも、出逢っていなかった可能性さえ、皆無ではない。


(もう、始まっているんさ)


戦争は、始まっている。
足手まといはいらない。
もしかしたら、クロス・マリアンという人物が独りでいるのは、煩わしさから逃れる為かもしれない。
仲間という情。
師弟という関係。
教団という柵。
彼の本質が、流浪であるとしたならば。
それはとても、自分と似ているのかもしれない。




Back Next
7-mori eyelid (©) Midori Yuki
inserted by FC2 system