それはまるでカードの表と、裏。
彼は光。
言動ひとつひとつが、眩しすぎてたまらない。
影そのものの、自分には。
「神田、早いですよ。もっとゆっくり…」
「煩ぇ、モヤシ」
今回の任務は珍しく彼と一緒で。
重たい荷物に目もくれずさっさと歩みを進める背中を、追う。
(いつまでも、誰かの背中を追い続けている)
何故自分はいつもそうなのか。
自分の足で立つことが、出来ずにいるのか。
(誰かの支えがないと生きていけない)
光がないと輝くことの出来ない月のように。
誰かの存在があって、初めて己の存在が成り立つ。
『ごめんね、ラビもリナリーも別の任務に行ってるんだ』
それは、今朝のこと。
苦笑を浮かべる室長が本当にすまなそうに見えて。
けれどこれは任務だから拒否権は当然無くて。
『いいんです。口をきかなければいいだけの話なので』
『そういうものかなぁ…』
当然隣には同じように書類を確認する彼の姿。
自分たちの声は聴こえているだろうに、一言も口を挟まない。
完全なる沈黙。
『まぁ、いいや。とにかく行ってきてくれるかい』
場所は、ここから遠く離れた、ある小さな村。
最近そこを訪れる旅人の様子がおかしいと、連絡が入ったのが昨日のこと。
もしかしたらAKUMAかも。
もしかしたら、イノセンスかも。
どちらとも分からないので調査を依頼され、出発して…そして現在。
「……痛いなぁ」
いつものように疼く左目。
けれど痛むのはそこだけじゃない。
(心が、痛いよ)
隣り合わせ、決して向かい合うことのない存在。
会話をしていても。
背中合わせで戦いを繰り返しても。
けっして、心だけは触れ合うことがない。
(僕は、影だから)
わかっている。
自分が今ここにいられるのは、イノセンスのお陰なのだ。
特殊な能力も、手段も。
全て、教団の役に立つから、なのだ。
(いつかきっと、奪われるだろう)
それは、死の間際かもしれない。
明日かもしれない。
…今、かもしれない。
(全うしたいだなんて、恐れ多い)
願ったことさえない。
ただ、前へ、前へ。
歩き続けることだけを。
(光を追って)
【Fin.】
後書代わりの戯言
久々にD灰です。
どれくらい久々かと言うと…あともう少しで1年経つ…というくらい久々でしたι
す、すみません…。
で、でも、そろそろエンジンかかってきましたね♪
良い傾向です。
このままリクエストにも着手したいと思っております(希望的観測)。
今回も、イメージの元となるイラストがあります。
【読書とジャンプ】を更新されている、むらきかずは様の描かれたイラストです。
こちらを見て頂けると、より一層愛が深まるのではないかと思います。
むらきかずは様
読書とジャンプ
また、タイトルは、群青三メートル手前 様より頂きました。
宜しければ感想等頂ければ幸いです!
web clap
2009/08/16 Wrote
2009/08/16 UP
Back