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Lycoris Alkaloid



その身がすでに
痛々しい紅に染まっていることに
本当は、気付いているのだろう




いつだって、目の前には紅しかなかった。
どこまでも広がるのは、青空ではなく、暗闇だけだった。


(刀が重たい)
(手がぬるぬるする)
(血の匂いで眩暈がする)


頬に染み付いた紅を拭う。
けれど、強い匂いは消えない。
ふ、と周囲を見渡すと、あたり一面、深紅に染まっていた。


(…違う)


これは、自分が流したものではない。
そう、わかっていても。
錯覚する。
これは、自分が流した深紅。
今まで振るってきた刀の下に広がるモノ。


「ユウ、お前何を考えているんさ」
「名前で呼ぶなっ」


いつの頃からか教団に所属するようになったこの男。
何を考えているのかが理解できず。
その片方の目で何を見ているのかもわからない。
行動すべてが不可解で。
意味がないようで、意味のあるもの。


(胡散臭いヤツ)


総じて評価はそうなる。
得体の知れない、胡散臭い人間。
AKUMAではないというだけで。
気味の悪さは同じだ。


「お前こそ、何を考えているんだ」
「俺?」


ふむ、と芝居がかった仕草で顎に指を当てる姿に、苛立ちを覚えずにはいられない。
何も、迷いのないように見えて。
何も、執着していないように見えて。
自分が、これほどに、囚われているのに。


「天秤、さ」


やがてぽつり、と呟かれた言葉は意味不明で。
そのまま言葉を止めてしまったまま。
続きが発せられることは無く。
もしかしたら、彼は彼なりに、思うところがあるのかもしれない。
自分が、深紅に思いの外悩まされているように。


(AKUMA退治は、人の為。イノセンスは、神の為。では、俺たちの存在は…)


振るい続ける刀は沈黙を守り続け。
ただ、ひたすらに、紅を広げ続ける。
可憐に、鮮烈に咲き誇る、曼珠沙華のように。



【Fin.】



後書


やっと書けましたぁ!!
キリトさま、お待たせしました!
貴方の神田のイラストをモチーフに書かせていただきました!
あぁ。。。何でこんなに時間がかかったんだろι
最初にキリトさまのイラストがアップされてからけっこう日が経っているのは気にしないで下さい


そんなキリトさまの美麗イラストは、Linkから(笑)



2007/07/15 UP
2008/03/17 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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