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きみのすきな唄



いつだって、貴方がいる
それだけで総て赦せる気がしていた



ラビ、と呼びかけた声は震えていた。
久し振りに教団内で見かけた姿は、相変わらずどこかしら怪我をしていて。


(それでいていつも、微笑んでいるから)
(心の底で何を考えているのか)


ファイルを抱える腕に力が篭る。
不安に、なる。
あの微笑みは、人を不安にさせる。
だからこの声が届かなくてもいい。
呼びかけるだけで。
生きて、動いている姿を見られるだけで満足だから。


「よぉ、久し振りさ。元気だったか」


俯いていると、ラビの方から声をかけてきた。
にこやかに、何もなかったかのように。


「ラビこそ、また怪我してる」
「こんなのいつものことさ」


誘われるまま、救護室まで向かう。
いつもこうやって、声を掛けてくれる。
触れてくれる。
けれど、それが言葉に表れたことはない。


(今更言えないよ)


「リナリー?」
「え…」


不意に、ラビが立ち止まる。
それに合わせて、足を止める。


(また、血が)
(どれほどの痛みと)
(どれほどの哀しみを)


彼は、ラビは。
その笑顔で総てを隠して。
仮面を被って。


(仲間、なのに)


「リナリー、俺はここにいる」
「ラビ…」


涙が零れて止まらない。
そっと、抱き寄せられる温もりが心地いい。
手離したくない。
そんな風に思ってしまう。


(いつか、彼は、いってしまう)


ここから、闇の中へ。
永久に変わらない、時間の中へ。


(世界を壊したくない)
(だから、誤魔化すしかない)


涙はいつしか止まっていて。
そっと、拭ってくれる指が優しくて。
微笑んだら、柔らかな笑みが返ってきて。


(すき、よ)


そっと、心の中だけで囁く。
届かなくていい。
けれど、いつか、気付いてくれればいい。


(ラビ)


哀しい瞳の。
哀しい存在。
世界を飛び立つ翼を持つ。
そして、残されるのは、足枷を持つ者だけ。



【Fin.】



後書


ということで、二度目のラビリナです
個人的には特にカップリングとか無いんですけど
でもなんとなく、この二人は許せてしまう。。。気がする
アレリナも好きなんですけどね


お気づきの方もいらっしゃるでしょう
これは、【君の好きなうた】と対になっています
もちろん、キリトさまの絵をイメージして書きました!
いかがでしょうか。。。?



2007/10/08 Wrote
2007/10/28 UP
2008/03/17 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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