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君の好きなうた



あなたがすきでたまらない
あなたがいればそれでいい
あなたがすることならなんでもうけいれる
だけど、おねがい
どうかふりむかないで



あれはまだ、自分がエクソシストとして教団へ赴任してからそれほど経っていない頃。
まだ自分と同年代のエクソシストは、リナリーしかいなかった頃。
まだ本調子ではなかったリナリーと。
適合したイノセンスを対AKUMA武器に変えたばかりの自分と。
同じ時を過ごすのには、理由はひとつしかなかった。


――経験不足、という、歴然とした差。


他のエクソシストにはない、弱さが、自分たちは持っていて。
それを補う為に、また、年頃も同じということで、自分たちは教団の中庭で一緒にいることが多くなった。
自分は、情報を収集する為に。
リナリーは、孤独を補う為に。
多くの時間を共に過ごした。


ある日、一体のAKUMAが、教団へ姿を現した。
手にした対AKUMA武器を実践するにはちょうどよい相手だった。
リナリーの意識の保ち方が変わったのも、この時だ。
彼女は、世界を奪われた代わりに、仲間を世界に見立て始めた。


「ラビ、私は、世界を守るの」
「…あぁ」


あれから十数年が経ち、仲間が増え、そして、消えていった。
リナリーの世界は構築され、そして壊れていく。
自分はそれを、ただ、見ているだけ。


「ラビ、私の世界は、貴方がいなくなっては、崩れてしまうの…」


あぁ、リナリー。
わかっている。
全てを理解していながら、全てを許容していたその瞳。
自分が最後の砦だということ。
その砦が、いつかは教団から離れていく現実をも、受け入れているのだろう。
もうあの頃は、戻らない。
どれだけ願っても。
記憶することは、許されない。
許されているのは、記録すること、だけ。


(すき、さ)


そんな言葉も、いつかは記憶から消さなければならないのなら。
初めから、なかったことにしたほうが、ずっといい。


(リナリー)


強い瞳の。
強い心の。
とても、弱い少女。
その世界を守るのは、自分では、ない。



【Fin.】



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後書


ということで、初のラビリナでございます
イメージイラストは、キリトさまの【花のうた】です
あの明るくて儚くて痛いイメージを突発的に文章にしたモノがこの中に紛れています
真実を知るのは、キリトさまだけ、という(苦笑)


キリトさま、いかがでしょう?
突発的文章をSSにしてみましたぁvv



2007/08/15 Wrote
2007/10/28 UP
2008/03/17 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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