Index  Menu  Main  Novel(SAIYUKI)  Novel(WJ/GAME)  Novel(etc) 

鐘を鳴らして



光も影も、
善も悪も、
ひとりではなく、誰かと共に
その存在を許容することで世界は回る
一瞬も、留まることなく


――そして自分は、それを輪の外から眺めるのだ


* * *


心地よいモノが体内を巡る。
瞼の裏にだけ存在する、闇の世界。
けれどその闇には膨大な知識と知恵が存在する。
ほんの少し、手を伸ばすだけで、そのすべては自分のものになる。
その日を自分は、心待ちにしていた、筈だった。


『ラビ、お前は心を寄せすぎるな』


何かに対して心を寄せるという感覚を知らなかった。
だからまだ、是、と答えることができた。
何の躊躇いもなく。
すべては、過去と未来の為の、現在なのだと。
身を過ぎるものに対して執着をすることなど、欠片も意味がないと。
そう、信じていた。


けれどあの日。
美しい音色を聴いた、あの日。
すべてがもう、終わってしまったと諦めた、あの日。
自分のなかで、何かが変わってしまったのを、確かに感じた。


(嘘はもう、つけない)
(けれど、曝け出すわけにはいかない)
(彼らを…)


ふ、と息を吐く。
肩に負う槌が、重たく感じる。
そんなことはある筈がないのに。
まるで、重荷を負うことを定められた、ように。
十字架の、ように


「弱虫…さ」


自分が何に迷っているのか。
何を選び取りたいのか。
本当ははっきりしているのに。
けれど、選択できない、弱さ。
選び取るべき道と。
選び取りたい道と。
どちらも明確に理解している。
理解している為の、苦しみ。


(苦しみなんて、必要ないモノ)
(いつも通りにしていればよかった筈さ)
(理解なんて、不要、だった)


けれど、自分はもう気付いてしまった。
立ち止まってしまった。
手を、差し伸べてしまった。


闇の中に鳴り響く、あの音色に向けて。
心の中の、迷いを得る為に。
彼らと共に、歩む道を同じくする。
それがどれほど辛いことか。
選び取るべき道とどれほど離れているか。


(もう、引き返せないさ)


そう、自分はもう、選びとってしまった。
先の見通しのつかない、この道を。
光を、追って。



【Fin.】



後書代わりの戯言



これは、雨さんと一緒に、
「この曲をイメージソングにして何か書こう」というコンセプトに書き始めたものです
思った以上に最後が難産で…(涙)


曲を聴いているうちに、これは絶対ラビの話だ、と思いました
たった独りで思い悩む姿が、何となく重なったんですね


これから原作は佳境に入りますが…ラビがもっと活躍するといいなぁ…と願ってやみません(苦笑)



宜しければ感想等頂ければ幸いです!


web clap




2009/09/18 Wrote
2009/10/12 UP




Back
7-mori eyelid (©) Midori Yuki
inserted by FC2 system