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In The Dark…side:L



彼の世界には
孤独と闇が同居している



便利な目を持っていると、思っていた。
それが間違いだって気付いたのは、哀しい痛みが分かってから。
魂が、痛みを訴えていると。
そんな姿を四六時中見ているなんて。


(普通じゃない)


普通の精神では、いられない。
コムイにそのことを伝えると、彼も同じようなことを思っていたらしいことが気配で伝わった。
誰が見てもおかしいのだ。
あんな、AKUMAの魂が見えるなど。
哀しみの象徴を見る瞳は、決して人の持つものではない。
なぜならば、その哀しみに自らも引き摺られてしまうから。


「…大丈夫」


激しい戦闘の後、濡れてしまった体を乾かしながら、何気ない風を装って声を掛けた。
視界が侵されるという状態は、どんな心地なのか。
聞いてみたい衝動に駆られる。


「大丈夫、です。ラビの方こそ、大丈夫ですか」


静かな落ち着いた声。
あんまりらしくないな、と感じた。
彼は、その境遇こそ泣きたくなるほど辛いけれど。
決して生きることを諦めている人間ではない。
歓びを知る人間だ。
なのに、今の彼は妙に静かで。


「我慢するな」
「我慢、ですか」


別人のように見える、と正直な感想を告げると、漸く彼は笑った。
それは、かすかな笑みだったけれど。
けれど、生きている証でも、あって。


「ふふ」


あぁ、彼は、アレン・ウォーカーは確かに呪いを受けてしまっているけれど。
けれど、心は、侵されていないのだと。
だからこそ、深く哀しむのだと。
わかって。


彼の世界は確かに闇の中で。
孤独と狂気と哀しみが渦巻いているかもしれない。
けれど、彼の生きている世界は、光を、見出しているのだ。




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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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