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Heaven-L-



いつまでも忘れられない光景がある
蒼色の空
紅色の大地
闇色の涙
そして、哀しいほど透明な、心



† † † †



いつでも、感じていた。
心の底の、空白。
空虚な、時間。
流れ行く、世界。


(俺は、ブックマンだから)


喜びは喜びではなく。
平らかな跡を知らず。
温もりを知らず。
痛みは痛みではなく。
争いの行方も知らず。
哀しみも知らず。
全てを客観視しなければ、ならず。


(ブックマンの性、ブックマンの業)


心を傾けすぎてはならず。
けれど、人であることを忘れてはならず。


(気が、狂う)


幾つもの出逢いと。
幾つもの別れと。
数え切れないほどの生と。
数え切れないほどの死と。
常に、心を均等に保たねばならないのに。
周囲はそれを赦してはくれない。


(傍観者であること)


彼が現れて、更にそれを困難だと感じるようになった。
彼、アレン・ウォーカー。
強大な破魔の力を持ち。
広い慈悲の心を持ち。
常に、自らよりも、仲間を信じる、強さを持つ、少年。


(アレは、自分の姿)


なりたかった、なりえなかった、自分。
この名と、称号を与えられて。
その日から自分の進む道は決まっていた。


(…疼く)


けれど、どうしようもなく、心がざわめく。
もし自分が、彼と出逢っていなければ、覚えなかったであろう焦燥。


透明な心。
闇色の涙。
紅の大地。
蒼色の空。


そして、二度と希むことの叶わない、空白の平穏。



【Fin.】



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2008/03/17 再UP




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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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