いつまでも忘れられない光景がある
蒼色の空
紅色の大地
闇色の涙
そして、哀しいほど透明な、心
† † † †
彼の、その優しすぎる心が気になった。
気になるというよりも、気に障ると言ったほうが正しいかもしれない。
あの瞳が。
あの声が。
あの存在が。
(気に入らない)
多分、すべてが。
彼と同じ場所にいるというだけで。
心が漣を立てる。
自分は彼ほど優しくなれない。
なりたいとも思わない。
「ユウ?」
こうして自分を無造作に呼ぶのは、あの眼帯の少年だけだ。
得体の知れない、不可解な少年。
歴史の裏を知るがゆえの苦悩があるにしろ。
その行動は不可解極まりない。
「どうしたさ」
「別に」
誰も、自分を呼ばないで欲しい。
その存在を、心に留めないで欲しい。
自分には、そんな価値は、無いのだから。
生も死も、超えた遠くに。
見詰めるもの。
手の届かない、儚きもの。
透明な心。
闇色の涙。
紅色の大地。
蒼色の空。
二度と、見ることの無い、うつくしい、天。
【Fin.】
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2008/03/17 再UP
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