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Call My Name



後悔だけが、過ぎる




ちょめ助、という名前は安易に付けただけだった。
それが彼女にとって、それほどに大切なものだったなどと、気付くわけが無かった。


出逢いは戦場、海の上。
数体のレベル2のAKUMAに手を焼いていて。
クロウリーの攻撃も、自分の攻撃も当てにならず。
手段を探して、足掻いていた時。
急に広がる青空に、驚きとともに、悦びが満ちて。
これでまた、生きられると強く感じたのを、覚えている。
船と自分たちを救ったのは、一体の改造AKUMAだった。
クロス・マリアンの伝言を携えた改造AKUMAに、名前を付けたのは、自分だ。
呼び名に困って、その口調が面白くて、付けただけ、だった。


『ちょめ助』
『ナニっちょ?』
『何でもないさぁ』
『なんだ、それっちょ…』


江戸に着いて、わかったこと。
人型に変形した彼女のボディ名はサチコと言った。
だから、サチコと呼び始めたのだけれど、それは彼女のお気に召さなかったらしい。


『サチコ』
『ちょめ助でいいっちょ!』


何度と無く繰り返されたやり取り。
呼べなくなった今になって、どれだけそれが、切なる願いだったかに気付く。
改造されていようと、なんだろうと、AKUMAはAKUMA。
ボディと魂は一致しない。
ましてや、魂は元のボディの魂を追い出した存在で。


「ごめんな、…ちょめ助」


空の塵となって、散っていく彼女に、最期の言葉は、届いただろうか。


『ごめんって、ナニっちょ』


憤慨する彼女の姿が目に浮かぶ。
今でも、名前を呼べば、返事が返るような気がするのに。
姿が、ない。
錯覚に、過ぎない。


『ありがとう、ジュニア…楽しかったっちょよ』


微笑んだ姿を忘れられない。
誰よりも、何よりも、満足げな笑顔だった。


「ジュニアじゃないさ…ラビさ…」


例えそれが、仮の名前だとしても。
一度でいいから、呼んで欲しかった。
そんな風に思うのは、もう既に失われたモノだからだろうか。



【Fin.】



後書


こちらもキリトさまの短編漫画に触発されて、突発的に書いたもの
あの最期には、泣かされました
あんな気分になったのは、船の場面以来だわ。。。
コムイさんの明るい台詞と相まって、涙が。。。(号泣)


で、キリトさまのBlog短編漫画を読みまして、頑張って書きました!
ラビちょめ。。。になるのかしら
なるんですよね、キリトさま??



2007/07/15 Wrote
2007/09/16 UP
2008/03/17 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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