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蒼の世界



いくつもの記憶が舞う
それらはすべて記録となり
そして、自分の内へ還る



† † † †



憶測で言葉を発したくない。
自分の言葉で、誰かに希望を持たせたり。
誰かを絶望させたりしたくない。
多分この姿勢そのものが、ブックマンとしてあるべき姿ではないと、あの男は怒るだろう。


(パンダの癖にさぁ…)


ブックマンは、ブックマンで在れ。
それが彼の口癖だ。
彼の名前がそのままその中身を示している通り。
いずれは、自分の名前も名前ではなく、中身そのものになるのだろう。


「アーレン」
「あぁ、ラビ。どうしたんですか?」


こうして、仲間という枠の中にいても。
どこか、遠くの出来事のように。
記憶を記録していく。
何月何日、何時に誰と、どんな会話をしたのか。
自分は何を言い、相手はそれに対してどのように返したのか。
ひとつひとつ、細かく分類し、分別していく。


「コムイが呼んでたさぁ」
「次の任務でしょうか」
「さぁな。俺も呼ばれてるから、そうかもな」
「どんな僻地に行かされるんでしょうねぇ」
「それどういう意味さ…」
「別に、他意はありませんよ」


くすくすと笑う姿は、本当に年相応のものだ。
AKUMAもヒトも、ノアでさえ、同じように心を傾け、時には自分さえも犠牲にするようには見えない。
彼の中には、その境界線は非常に曖昧なものなのだろう。


(興味深いさ)


「あ、アレンくんとラビじゃない」
「よぉ、リナリー」
「リナリー、コムイさんのところへ行くんですか?」
「そうよ、次の任務の資料を届けにね」


彼女もまた、世界を確立しているひとり。
自分の枠でしか世界を図れず。
その枠の中でしか自分を維持できない。
それはとても厳しい生き方だろう。


(アレンとリナリー)


二つの符号。
恐らく偶然ではないだろう、出逢い。
これは、記録するべきモノ。


(記録、か)


時折、こうした考え方に疑問を覚えることがある。
モノとして全ての物事を捉えること。
自分の感情さえももちろん例外ではなく。
虚しさが過ぎることがある。


(過度な干渉は厳禁さ)


自分はブックマンの後継者。
いずれは、ブックマンになる。
それ以外の何者にもならず。
また、それ以外の何者でも在らねばならない。
遠からず、自分の居場所はここにはなくなるだろう。
けれど、それを哀しんではいけない。
また、喜んでもいけない。
感情を動かすことは、記憶すること。
必要とされるのは、記録することだから。
それでも、…。


(もう少しだけ、このまま)


この、心の温もりを得難いものだと、感じていたいのは。
感傷だろうか。



【Fin.】



後書


これは、鈴谷キリト様の書かれた素描を基に書いたものです。
イメージとしては、『†青い時間†』にも通じるのかな。
どこまでも暗く、矛盾した想いを抱えて考え込むラビが大好きです!
今の時点でまだ今週号は読んでいませんが、
読んだらまた少し印象が変わるかしら。。。
(今のところ、感想サイトの感想を読んでの判断で書いてます)


えっと、読みました
うーん。。。変わんないですね
人になりたくて、でも義務も全うしようとするラビの姿勢は痛々しくて大好物です!!



2007/06/10 UP
2008/03/17 再UP




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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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