深いふかい、闇の中。
久し振りにあの声を聴いた。
『やあ、ラビ。まだ、お前は正気なのか』
どこか無邪気な声。
そして、誰よりも遠くなってしまった、本当の自分。
背中合わせで顔は見えないけれど。
けれど、どんな表情をしているかなんて、誰よりも知っている。
「俺はまだ、正気さ」
『悲劇だな』
即答。
思わず笑ってしまう。
わかっている。
これは、自分。
残酷なまでに心を整理しようとする、自分。
鏡よりも鮮明に。
思い出、などという甘いモノは失せ。
ただ、記録していく手段として。
(壊れていく)
物事をすべて、感じるままに捉えられなくなったのはいつからだったか。
笑うことも。
泣くことも。
話す言葉も。
相手を見ることも。
――戦うことも。
すべて、意識して行うようになったのは、いつからだったか。
『それでもお前は、自分が正気だと言うのか、ラビ?』
「あぁ…正気さ」
どれだけ壊れていても。
どれだけそれを自覚しても。
まだ、自分はここにいる。
ここに、いて、立っている。
『それなら俺は、待つだけさ』
ぼんやりと、声が遠くなるのを感じる。
夢の終わり。
何処までも深い闇がほんのりと、藍色に染まる。
(待つ必要は、ないさ)
自分は後継者であるけれど。
けれど、誰よりもそこに近く在るから。
正気のまま。
(狂っていることに気付かない内は、まだ正気だと思うだろう?)
他者から指摘されても。
自分でそうと認識しなければ。
そこに立ち続けることは、赦されるだろう…?
【Fin.】
後書
ラビの記録の仕方は、物事を自分の中で昇華することから始めるのだと思っています。
だから、受け止め方も、反応も、人間らしく、感情的なのではないのかな、と。
この作品は、最近お知り合いになり、足繁く通うようになった、
D灰イラストサイトの【錆色アルカ】様のイラストをモチーフに思いついたものです
鈴谷キリトさま、快く承諾してくださり、ありがとうございます!!
キリトさまの素敵なイラストサイトはこちらです!
錆色アルカ 様
http://epos.flop.jp/arca/
2007/05/22 UP
2008/03/17 再UP
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