――心はここに残してゆける



心を留め置くこと。
確かに受け止めること。
思い出は、思い出に過ぎない。
どれほど強く、激しく願っていても。


（…代わりたかった）


心に突き刺さる。
感謝の言葉。
肩越しに見た朧月。
失われていく温もり。
たった一度の、抱擁。


（私は、貴方の部下として、いつまでも傍に在りたかった）


思考はより鮮明に。
心は痛みを残すけれど。
目の前の存在は、慕った方ではない。


（お前は、紛い物、だ）


この身を貫く痛みよりも。
あの方の痛みを思う。
どれほどの長い時を、たった独りで。
負うことを忘れた自分を、責めてはいないだろうか。


（いいや、違う。あの方は、そんな真似はしない）


瞳をほんの少しだけ翳らせて。
そして、微笑んで。
手を翳されるのだ。


「参の舞、白刀」


脳裏を過ぎった姿は。
いつでも堂々として在られた、あの方の笑顔。



【Fin.】



後書


ルキアの海燕絡みのエピソードは、本当に好きなんですよ
だから、乱丁本も返さなかったんです（笑）
あぁ、切なかったですねぇ。。。



2008/05/11　Wrote
2008/05/22　UP



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