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曇天



今でも思い出すんや
あんとき、気付いたことの意味を




笑みを絶やさずにいることは、実は苦しいのだと気付いたのはごく最近のことだ。
けれど、それゆえに、相手を油断させることも出来ると気付いたのも、ごく最近のこと。
真面目にしていれば、なるほど確かに、信頼には値するだろう。
けれどその分、距離は生まれる。
そして気付けば、その距離は溝となり。


(一巻の終わり、や)


それくらいならば、親しみやすさを前面に。
そして、真実を暴く。


「へぇ、これが、新しい隊長はん」
「浦原喜助と言います」


へらへらして。
腰が低くて。


(ひよ里のいっちゃん嫌いなヤツやな)


「平子隊長」
「シンジでええ。同じ隊長なんやから」


お互い、腹を探りながら会話をする。
知りたいことを隠して。
その周囲を固めて。
胡散臭い笑みで。


(あぁ、そういえば)


旧知の仲だと言う二番隊隊長が言っていた。


『アヤツはな、掴みどころがない。だが、真実は見ている。その目は確かじゃ』


だからこそ、長く付き合っていられるのだと。
自分の隊の者を、信じる心。
その瞳は、揺るがない。


(それに引き換えコッチは…)


知らず知らず、溜息も漏れるというものだ。
あのような信頼関係は、自分たちにはあるのだろうか。
何を考えているかわからず、ただふらふらとしている隊長と。
優しい笑みを絶やさず、それでいて本心を明かさない副隊長と。


「なァ」


誰ともなく、呟く。
空に。


「あんさん、いつになったら、…」


言葉は、風に消え。
きっと、どこにも届かないだろう。



【Fin.】



後書


ということで、初書き平子隊長です!
かっこいいですよねぇv
毎週が楽しみでなりません。。。ふふふ。。。



2008/04/09 Wrote
2008/05/22 UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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