甘いミルクティーを、一口、飲む。
口の中に広がる温かさに、吐息が漏れる。
(…やだな)
こんな時でも、思い出すのはあの酸味の効いた珈琲。
緩やかな時間の流れと。
静かな音楽の合間に聴こえた、波の音。
大切にしていた、空間。
(ちょっと癪だわ)
もう思い出すこともないと思っていた。
あの日、冬の海で。
突然に告げられた、拒絶の言葉。
悔しくて哀しくて、眠れない日々を送ったのは、遠い過去のこと。
(改めて思わなくても、随分と自己中心的、よねぇ)
なんだか納得いかない気持ちで、砂糖を一匙、カップの中に追加する。
より引き立つ甘さに、それが既にミルクティーではなくなりつつあることには、見ないフリをする。
(…チョップ、かな)
時計を見ると、約束の時間を大分過ぎている。
今日は久し振りの待ち合わせなのに。
日時も、場所も合っている筈。
間違っているのは…相手の方。
(…来た来た)
どんな人混みでも、探し出すことができる自信がある。
それだけ長い間、ずっと見ていたから。
慌てた様子で駆けてくる姿に、笑みが零れる。
(結局、甘いんだよね)
「悪い、遅れた…」
「30分、ね…ふぅん」
にっこりと、微笑みかける。
怯んだ表情に、更に笑みを深める。
(さて、どうしようか)
「飲む?」
カップの取っ手を彼に向ける。
少しだけ見える躊躇い。
けれど、余程喉が渇いていたのか、一気に飲み干してしまった。
(あぁ…飲んじゃった…)
「甘っ!!」
一瞬の沈黙の後、眉間に寄る皺。
そして、慌てて水のコップに手を伸ばす姿に、笑いが止まらない。
「私を待たせるからよ」
行こう、と伝票を渡し、出口へと足を進める。
当然、怒っていないわけではないので、自分で払う理由も無い。
渋々という様子で付いてくる姿に、愛しさが込み上げる。
「ねぇ、瑛」
背伸びをして。
耳元で、囁く。
とびっきり甘い、言葉を。
――ダイスキヨ
【Fin.】
後書代わりの戯言
あぁ。。。とうとう、書いてしまいました
ときメモGS2の、瑛×主人公でございます。。。
なんか…すっごく楽しかったですvv
。。。ジャンル増やすかな。。。
ますますヨロズサイト化しますけどね(笑)
2008/08/24 Wrote
2008/09/06 UP
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