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Sentimental days



「いいなぁ…」


ぽつり、と落とされた呟きに、顔を上げる。
多分本人はその言葉が声に出ていたとは気付いていないのだろう。
今は試験期間中で、勉強を教えて欲しいと言う彼女の為に、わざわざ、図書館まで来ている、というのに。
当の本人は、窓の外をぼんやりと見ていた。


(以前までなら、チョップ…だな)


けれどそう軽々しく触れることができなくなったのは、いつからだっただろう。
学年が変わって、春先にはまだ大丈夫だった。
他愛ない言葉のやりとりと、じゃれあうことも。
それは友情と言ってもおかしくないほどのものだった。
けれど夏の花火大会の時に、普段と変わらない筈の彼女のちょっとした仕草に戸惑うようになって。
修学旅行の時には、自分の心の変化がよくわからなくなって。
秋の学園祭で、彼女のステージを見た時には、もうどうしたらよいのかわからなくなった。


(こんなに近くにいるのに)


きっと、心は遠い。
なぜなら彼女が見ているのは、。


「どうしたんだよ」
「…うぅん、なんでもない」


視線の先には、彼女の友人と、そして、一人の男子生徒。
それを羨ましそうに観ている理由は、恐らくひとつだけだろう。


「ほら、ここも」


手にしていたペンでテキストを軽く叩くと、彼女も漸く窓から視線を戻した。
とりあえずは目の前の問題に向かっているらしいことに、安堵する。
何も言わない自分には、何を言う資格もないだろう。
何が羨ましいのかとか。
もっと、こっちを見て欲しいとか。
自分なら望むことを叶えてやれるとか。


(全部、言えよ)


「瑛くん、これで合ってる?」


向けられた視線。
瞳の奥に宿るのは、信頼と、友情と。
ほんの少しの戸惑いと不安の色。
何をそんなに不安に思っているのだろうか。


(いいよ、もう)


彼女がそれを望むのなら、このままでいい。
この先どんなに苦しくても。
それが彼女の為なら、我慢する。


(だから、何でも言えよ)


誰よりも傍にいるから。
だから、誰よりも頼りにして欲しい。


(もう、それだけでいいよ)


この想いは決して、表には出さないから。
いつか、前のような、笑顔を見せて欲しい。
それで十分、救われるから。


「どうしたの、瑛くん?」
「なんでもないよ。ほら、次」


こんな日々が、どうかこのまま続きますように…。



【Fin.】



後書代わりのご挨拶


勢いに乗りまして、書かせて頂きました!
初めての、親友Ver.です
片想いの切ない気持ちは、実体験からきています(苦笑)


よろしければ、ご感想などいただけましたら幸いですv


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2008/10/17 Wrote
2008/10/17 UP




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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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