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華の名前



偶然だ、そう彼女は言う
けれど自分は知っている
それは、作られた偶然だと



彼女が喫茶店でアルバイトをするようになったのは、自分が卒業してからすぐのことだった。
金銭的目的のアルバイトではない。
彼女はそれまで、別の喫茶店でアルバイトをしていた。
だから、裕福とは言えないだろうけれど、それなりに充実はしているはずなのだ。


(僕のせいだね)


彼女は自分を追って、アルバイトを始めたのだ。
いつ逢えるか知れない、自分の為に。
それに、良心の呵責を覚えないわけではない。


(これはゲームだ)


それを理解しなかった彼女が悪い。
彼女はとても聡明で。
魅力的で。
そして、自分に釣り合う存在だ。


(あの学園がいくら人材が豊富だとしても、なかなか釣り合う子まではいないからな)


彼女との出逢いは卒業式。
あの人を見送った後、のこと。
どこか、気になると思った。
そしてすぐに気付いた。


(この子が、あの…)


容姿端麗、成績優秀、友達思いで、いつも人の輪の中心にいる。
そんな彼女の噂は、学年の違う自分のところにまで届いていた。
だから、本当はあの時、名前を聞かなくても知っていたのだ。
それでも、少しでも接点を持ちたくて。
気になった理由を知りたくて。


(だから、僕なりに努力はしたさ)


偶然の出逢いのように見せかけて。
実はとても計算していたなんて。
彼女はきっとずっと、知らないだろう。
なんて、傲慢な考えだろう。
自分でもよくわかっている。
けれど、もう止められないのだ。
自分は逃げ道は用意していたのだ。
それを無視したのは、彼女だ。


(だから僕は、悪くない)


学校が忙しいだろうに、アルバイトを増やした彼女。
とても疲れているだろうに、そんな素振りは見せず。
笑顔を絶やさない。


(いい加減諦めればいいのに)


そう思いながら、心に広がる、温かな想い。
あの人に抱いていた想いとは違う、綺麗なささやかな想い。


(まるで、花のようだ)


この想いが何なのか見極めたい。
だから、もう少しだけ、このままで。
いずれ、すべて解決するだろうから。


「やあ、もうバイトは終わったの?」


ゲームは続く。
ほんの少しの真実を滲ませて。


(壊れるのは、自分が先か彼女が先か)


自分が壊れてしまう。
それもまた、良いかもしれない
想いが消えてしまうのは惜しいけれど。


(彼女が壊れるよりは、いい)


そう思う時点で既に答えは出ているけれど。
もう少しだけ、時間が欲しい。
もう少しだけ。



【Fin.】



後書代わりの戯言

初真嶋太郎です
(通称またろう)
魅力がある程度以上無いと来てくれない、相当ヒドイ人です
この人のお陰でどれだけストレスが溜まったことか(遠い目)

あぁ、とっても楽しかったです!
彼は本当にいじり甲斐があります
もっと他のお話も書けるかな…


よろしければ、ご感想などいただけましたら幸いですv


web clap



2008/10/02 Wrote
2008/01/01 UP




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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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