1.
初めて見た瞬間
これは、一生のものだと感じた
◇ ■ □ ◆
四月。
桜が既にその花弁を散らす頃。
悟空はまだ少し大きめの制服に身を包み、鉄の門の前に立っていた。
人一人がようやく通れるほどの幅しか開いていない門を前に、悟空はしばし躊躇した。
慣れない通学路とは言え、遅刻をしてしまったのは事実だ。
早く行かなければホームルームが終ってしまう。
解ってはいるのだが、なかなか足を踏み出すことができない。
(入学四日目で遅刻か…最短記録だな)
溜め息と苦笑混じりに思う。
そうしてようやく門を抜ける。
その時だった。
(…桜の中に陽の光が見える)
そう思わせる存在が、桜の樹の下にいた。
朝焼けの瞳が、遠目からでもはっきりとわかる。
視線をそらすことのできない、存在感。
(誰だろう)
心に焼き付く。
強い眼差し。
整った顔。
すらりとした背。
そして、この学院のものではない制服も。
「…職員室はどこにある」
それが、始まりだった…。
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