Side:Goku
彼が傍からいなくなる
そんな日が来ることを、想像していなかった
◇ ◆ ◇ ◆
「ずるいよなぁ…アイツ。無試験で留学だろ?」
「半年間だっけ? いいなぁ、遊び放題じゃん」
それは、逢いたい、と約束を交わした、その日の昼。
学食へ足を踏み入れたとたん、耳に入ってきた、言葉。
嫉妬に満ちた、言葉の羅列。
できればそのままその場を離れたかったけれど、次の瞬間、足が止まった。
「知ってるか? 玄奘って、教授の養子なんだってさ」
「うわ、マジで? じゃあ、コネか? ずりぃなぁ」
いやらしく笑い合う彼らの姿を視界に入れたくなくて。
そのまま、逃げるように走り去ってしまった。
(嘘だ)
裏切られた、と思うのは、隠し事をされたから。
隠し事だと思うのは、大切に想うからこそ。
けれど、不安にもなる。
(三蔵は、俺のこと、どう想っているのかな)
桜の下で出逢ってから、何度目の春を迎えるのか。
けれど、次の桜が咲く頃には、彼はいない。
(逢いたいって、なに言われるのかな)
初めて芽生えた不安。
それは、拭い切れない、染みのようで。
(安心、させてほしい)
多くは望まないから。
せめて、傍にいさせて。
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