Index  Menu  Main  Novel(SAIYUKI)  Novel(WJ/GAME)  Novel(etc) 



1.



あの日夢見たモノは
今、限りなく近くに在って
この上なく倖福な心地にさせてくれる…


◇ ◆ ◇ ◆


あれから丁度一年、と笑みを浮かべる。
彼の机の上に、大量の包み紙を見て、心を痛めた日は遠い。
今自分たちは、あの頃よりも遠い場所にいる。
遠距離というほど遠くはないけれど。
高校生の頃とは比べ物にならないほど遠い。
けれど、心の距離は、あの頃よりも確実に近い。
支えあう距離と心と時間。
相手の温もり。
声だけで伝わる優しさ。
そんな些細な事が、今自分の全て。
そして、自分の倖福。
きっともうすぐ彼が来る。
珍しくも彼の方が待ち合わせに遅れていることに、きっと彼は驚くはず。
手の中の包みをそっと握り締める。
甘いものが苦手な彼の為に選んだのだ。


(気に入ってくれるかな)


銀色の、光。
彼は自分に光を与えてくれたから。


(分かってくれるかな)


未成年だけれども。
けれど、相応しくない彼だからこそ、似合うだろう。


時計の針は、約束の時間まであと10分だと告げる。
きっともうすぐ彼は来る。
腕時計を見ながら。
けれど、悠々と歩いて。
そして、自分を見つけて、朝焼けの瞳を和らげるのだ。
真冬の太陽のように。



【Fin.】



Back Next
7-mori eyelid (©) Midori Yuki
inserted by FC2 system