Side:Goku
そんなつもりはないと
言葉をいくら重ねられても
不安は消えない
◇ ◆ ◇ ◆
放課後、約束の時間に現れた彼の姿を見て、心が冷えた。
噂は噂ではなく、本当のことなのだと。
「どうして、言ってくれなかったんだ」
「留学のことか」
こくり、と頷くことで肯定を示す。
けれど本当は、もっと聞きたいことがある。
言ってしまいたくなる。
「以前から決まっていた。何度も言おうとした」
「でも、言ってくれなかったよね」
お互いが、最悪の状況でお互いの情報を耳にしていたこと。
隠し事は、するつもりがないと言われるほうが、よほど辛い。
「三蔵にとって…」
言いかけて、止める。
(言ってはだめだ)
これだけは、言ってはいけない。
彼には彼の真実がある。
たとえそれが、自分にさえ言えないようなことでも。
暴くことは、できない。
「…ごめん」
「…悟空…」
何かを堪えたような表情が痛い。
何もかもを、言ってくれなくてもいい。
ただ、。
「不安にさせないで…」
耳に飾った銀が、重たく感じられる。
あの頃よりも深くふかく、想いは重なるのに。
心が、重ならない。
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