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1.



想いが、開く瞬間
それは、鮮やかな華になる


◇ ◆ ◇ ◆


バレンタインの贈り物を、今も使い続けてくれる彼の姿を見て、心が温かくなる。
本当はあまり好ましくないけれど、愛煙家の彼の為に選んだ、シルバーのライター。
華奢なデザインが気に入って、これなら使ってくれるだろうと。
身に付けてくれるだろうと思って渡したのだ。
以来、彼はずっと使い続けてくれている。


(嬉しいかも)


恋人として付き合うようになって何度目のクリスマスを迎えるのか。
いつも隣にいられるわけでもなく。
毎日逢えるわけでもない。
電話もメールもそれほどしないけれど。
不思議と淋しいとは思わない。
それはきっと、心が確かに繋がっているから。


「あ、雪」


遠くで誰かが呟いた声に、視線を上げてみる。
降り注ぐ、白い華。
思い出すのは、出逢いの春。
綺麗な花吹雪の下で出逢って。
嬉しいことも。
哀しいことも。
すべて、彼が教えてくれたことだ。


(ありがとう)


感謝を、する。
全ての事柄に対して。
彼と、巡り合わせてくれた何かに対して。
それを運命と呼んでも構わない。
彼のいない世界なんて、もうありえない。


「悟空」


振り返ると、待ち望んでいた相手が立っていた。
あぁ、感覚が蘇る。
花開く。
感情の、華が。



【Fin.】



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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