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花火



幾つも空に咲く花




花火大会に行こう、と誘ったのは、特別な二人になってから初めての夏のことだった。
彼が人ごみを苦手としていることは知っていた。
苦手というよりむしろ積極的に嫌いだろう。
でも、一緒に見たかったのだ。


「駄目?」
『…行きたいんだろう?』


仕方がないな、と溜息混じりに得た了承は、自分を想ってのこと。
嬉しい。
そんな些細なことが。


(きっと無理をさせている)


一緒にいたい。
それだけの想いが、積もり積もって。
我慢できなくて。
確かめ合ったのが、この間の春。
それから、なかなか逢えないけれど。
でも、前よりも心の距離は近い。
夜、眠れない時は、声を聴くことが許される関係。
朝も昼も、辛い時は悩みを打ち明けることが出来る関係。
嬉しい時も悲しい時も。
どんな時でも、一緒に、いられる距離で。


「じゃあ、後で」
『あぁ』


花火大会は実は口実だ。
勉強のし続けで疲れが溜まっている彼を少しでも休ませてあげたかったのだ。
逢いたいだけではない。
自分が、彼と逢って、癒えるように。
彼も、自分と逢って、癒えてもらえるように。


(まだ内緒だけど)


だって笑われてしまうから。
だから、秘密にして。
空を見上げる。
一緒に、花を、見る為に。


いつまでも。



【Fin.】


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後書


久々の新作は、『月シリーズ』お得意の番外編シリーズです。
一つの大きな山場を越え、今回は幸せな二人を描いてみました。
どうでしょう?
本編は佳境ですが、頑張って書きます。
(実はまだ一行も書いてないです…)
さて…頑張ります!


2005/07/21
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後書2(笑)
この作品、実は去年の7月に書いたものです
懐かしいですねぇ。。。
M川様も私も忙しくて、中々日の目を見ることの無かった作品でしたが
今回M川様のご好意によって、こうして私にHPにてアップすることが出来ました
徐々にこうやってアップしていきましょうか。。。


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2008/03/14 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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