夢に魅入られる
失う恐怖に心を奪われた日は遠い
† † † †
叫び声は、闇に吸い込まれた。
「――っ」
金と紅に染め上げられた夢。
懐かしい、慕わしい金色と。
一瞬で塗り潰された紅色と。
「…ゆめ…」
限りなく現実に近い、夢。
動悸が治まらない。
誰かの名前を呼びながら、手を伸ばし。
それでも届かず、嘆く声。
あれは、過去の自分。
(もう、夢なんだ)
溜息ばかりが零れる。
「どうした」
顔を上げると、朝焼けの瞳が、自分を見つめていた。
まっすぐな、光。
この光の為に、自分は過去を受け入れた。
すべて、捨ててもいいほどの覚悟を得た。
「なんでもない」
頭を振り、今しがた脳裏に焼きついた光景を振り払う。
心に染み付いている光景の為に、逆効果だったけれど。
「なんでもないわけあるか」
気付くと、傍らに彼の姿が、あった。
ぬくもりに包まれる。
「寝ろ。朝はまだだ」
「…うん」
時々、本当に時々、彼はこうして自分を甘やかしてくれる。
初めて出逢ったあの日から。
こうして、旅に出るようになった今も。
「三蔵」
「…なんだ」
「ありがとう」
返事はなかったけれど、それでもよかった。
心に届いているから。
もう、今夜はあの夢は訪れない。
そう、確信して、瞼を伏せる。
(傍にいてくれて、ありがとう)
【Fin.】
後書
かなり突発的に書きました
お正月なので、『初夢』と掛けてみました(笑)
旅の途中、ですね
こんなに優しい三蔵様は詐欺のようですが。。。
まぁ、ほら、保護者ですから(苦笑)
宜しければ、感想をくださいv
ではまた!
2007/01/04UP
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2008/03/11 再UP
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