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吐息



嘘だ、と震える唇が声なき声を発するのを目にする。
ひどく罪なことをしているのだろう。
ありえないことだと、彼はきっと思っているはず。
そうだろう。
この自分が、何かに執着するなどと。
本来はありえないことなのだ。
ただ、彼だけは。
悟空だけは、離さない。
離せない。



それは罪だろう。
彼は望まないことだろう。
いつからか。
初めて出逢った時からか。
心に住み始めた、光。
いつか大きくなって。
苦しくて。
すべてを手にしたいと思い始めた時、壊れたのだと思う。
彼は、いつか離れるのだろうと。
思い始めたら止まらなくて。


手を伸ばしてしまった。
欲しくてたまらない。
どんな拒絶にあっても、きっと止まらないだろう。
涙を見せられても。
ああ、きっともう狂っているのかもしれない。
その吐息をすべて手に入れたいと思うなどと。
もう、おかしいのだろう。


視界の端に姿を捕らえる。
呼吸が止まる。
胸の高鳴りを覚える。
声を耳にする。
止まる足取り。
そんなものに、何度惑わされたか。
きっと、彼は知らないのだろう。
想いの欠片を口にするだけで戸惑う彼は。



【Fin.】


※後書
これはもともと悟空用に書いていた筈、だったのですが。
いつの間にか三蔵が主役ですね。
そしていつまでも三×空を書かなくてすみませんι
つ、次こそは...っ!!


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2008/03/10 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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