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太陽



Goku




彼は自分にとってすべてで


いつか、共に在りたいと願っていた


叶うはずのない願い


叶えるには彼はあまりにも、遠い




「なあ、八戒」


「はい、なんでしょう」


悟空は頬杖をつきながら、台所に立つ八戒に声を掛ける。
今日は珍しく悟浄はいない。
三蔵も公務で寺院を出ており、暇を感じた悟空は遊びに来たのだ。
ついでに相談もしようと考えながら。


「八戒はなんで悟浄と住むようになったの?」


とたん、がしゃんという音とともに、八戒の動きが止まる。


「え?」
「だってさ、八戒ってそれほど人間が好きじゃないってのは知ってるし。っていうか気付いたっていうか」


気になってさ、と悟空が続けると、苦笑しながら八戒が悟空の前に座る。


「なぜ今ごろ?」



八戒の思わぬ言葉に、悟空は息を呑んだ。


「な、ぜ?」
「ええ、そうです。だって僕が悟浄と暮らし始めた時に聞いてもよかったでしょう。ならなぜ今なんですか」
「...大切な人がいるんだ。気付いたんだ。だって眩しくて。でも、いいのかなって思って」


そしたら気になって、と最後は囁くように告げる姿に、八戒は微笑んだ。


「なにが大切なのかは自分で決めることですよ、悟空」
「それが相手にとってどう思われても?」


不安そうに顔を上げる悟空に、八戒は頷く。


「自分の大切なものは自分にしか判らないからです。
大切な人に理解してもらおうと思わないほうが、本当は幸せなことなんですよ」


僕のように、と小さく呟く八戒の表情を、悟空は忘れまいと強く心に刻んだ。



いつか判る日が来るだろうか


この想いの理由を


出逢う前にもう決まっていたような


いつまでも変わらぬ太陽のように



その意味と
その真実に



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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