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頬を打つ水滴



いつだって、心の中では願っていた
――この手を、離さないで



4人で西への旅を始めた頃、こんなにも不安な気持ちになることは無かった。
手を伸ばせばいつだって、彼には届いたし。
声も、聴けないことはなかった。
特別何かを望んだことはないけれど、いつだって、傍にいた。
けれど今は、差し伸ばされた手は何も掴めず、声も聴こえない。
離れて、初めて気付いた。
こんなにも、心を占めていたことに。


(さん、ぞー)


初めて心惹かれた存在が、最期にくれた温もり。
届かないと分かっていて叫ん声も、流した涙も枯れ果てた頃。
彼のことを、想った。
いつだって、近くにいて。
それが自然で。
初めから、定められているように、寄り添うことを許されていた。
もし彼が、彼女のように、命を絶ってしまったら。


「……っ」


震えが、走る。
その時、気付いた。
あまりにも自然に傍にいて、気付かなかったこと。
彼が、他のどんな存在よりも、大切で、失いたくない存在だと言うこと。
彼女は見送った。
けれど彼ならば、一緒についていく。
そんな、想いに。


「西へ、行こう」


必ず逢えると言う保障は無い。
彼も、自分より大切な存在を見つけてしまっているかもしれない。


(後悔は、二度としたくない)
(あんな哀しみは、二度と味わいたくない)


目的も無く、進んでいた以前とは違う。
今度は、この手に、確かなものを掴む為に。


再び、その手を、離さなくても済むように。



【Fin.】


後書


ということで、お約束の8巻ネタです
三蔵一行Ver.。。。というわけではありませんけれど
これはこれでアリかな、と。。。


初恋って叶わないって言うじゃないですか
今の悟空にとって、初恋はあの妖怪の少女だと仮定して書きました


タイトルは、前半は【群青三メートル手前】さまより、
後半は、自分で辞書を調べました
言うまでもなく【あめのなくこえ】と対になるものになるように、と思ったのです、が
。。。長いですねι



2007/07/16 UP
2008/03/11 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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