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視線



欲望が生まれる瞬間



願いはただひとつ


叶うことなら



ずっとこのまま傍に...




想いを告げられた。
驚かなかった、といえば嘘になる。
けれど、嫌だったかというとそれは違う。
本当は、とても嬉しかった。
ただ彼はとても優しい反面とても傷付きやすく、臆病で。
さっきからずっと目を合わそうとしない。
馬鹿だなぁ、三蔵。
目を見ればすぐわかるじゃないか。
俺が三蔵を好きだってことくらい。



知っていた。
ずっと。
三蔵が自分を大切に想ってくれていることを。
ただそれが、どんな種類のものかわからなくて。
気付きたくなくて。
目を逸らしていたのも本当。



自分の想いが、恋と呼ばれる類いのものだと知ったのは、八戒と出逢った頃。
初めて逢った時から。
あの暗い世界に初めて手が差し伸べられた時から。
ずっと、彼が好きだった。
いつか、彼がしてくれたように。
自分も手を差し伸べたいと。
守られるだけではなく、守りたいと。
思っていた頃に、八戒と出逢った。



八戒は優しく、言葉を選んで話をする。
その割に人に対して心を明らかにしない。
とてもよく似ていると感じた。
自分に対して壁を作り、想いを閉じ込める。
嫌われたくないから。
では八戒は、誰に嫌われたくないと思っていたのか。


「本当は、とてもずるいんですよ、僕は」


やわらかく微笑みながら、視線はどこか遠くを見ていた。
同じ、瞳で。
自分も三蔵を見ていた。
それに気付いた。
誰かを、自分よりも大切に想うこと。
とても幸福で。
とても苦しくて。
けれど目は離せない。


「俺、三蔵のこと好きだよ」


すべてはここから。
今度は俺が、手を差し伸べる。
ずっと見つめていた分だけ。
同じだけ、ずっと。



【Fin.】



後書
えっと、これは『吐息』の続編です。
友人に「片思い路線が多いのね」と言われてしまったので、
せめて少しくらいは幸せにしてやりたいと...。
う、うまくいかなかったかもしれないですがι


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2008/03/10 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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