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二人と一本の傘



「…失敗、しましたねぇ…」


家を出た時点では曇り空だった。
そのことが気にかかったけれど、店はすぐそこであるし、それほど時間がかかることはないと手ぶらで出たのだが。
店の外へ出ると、降りしきる雨の雫に、隣の人の顔さえよく見えない状態だった。
右手に食料の入った紙袋を抱え、そっと、溜息を漏らす。


(通り雨だといいのですが)


降り続く雨には、いい印象は無い。
思い出は暗く。
重たく。
心の底に積み重なる。
瞼を伏せ、視界を閉ざせば、広がるのは深紅。
自らが染めた。
失いたくなかった存在。


「よぉ、やっぱり傘持っていかなかったんだな」
「…悟浄」


掛けられた声に顔を上げると、同居人が傘を片手に立っていた。
いつものように、どこか哀しそうに瞳を眇めて。
口の端だけを上げる、笑みを浮かべて。


「家帰ったらお前、いねぇし、雨は降りそうなのに傘はあるし」


心配で迎えに来た、と傘を差し出す。
一本しかない、その傘を。
自分の身を濡らしても。
雫から、守ってくれている。


(優しすぎですよ)


心が揺れる。
それは、弱さだろうか。
逃げなのだろうか。


「ありがとうございます。助かりました」


当たり障りの無い言葉を並べて。
心に蓋を、する。


動きかけた想いを封じ込めて。
傘で、雨から身を守るように。
心を、守る。
もう二度と、深紅は思い返さないように。



【Fin.】


後書


久し振りに最遊記を書きました
が、書き方忘れましたι
おかしいなぁ。。。


一応これは八戒さん生誕おめでとう話のつもりだったのですが
思い切り暗い上に、何か新しい話が始まりそうで恐いです(苦笑)


書き上げたのは一応当日ですが、
恐らくアップは翌日になるでしょう。。。
色んな意味で、ごめんなさい。。。


お題は、【群青三メートル手前】さまより頂きました!
いつもありがとうございます。。。!


2007/09/21 Wrote
2008/03/11 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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