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Swearing:Hakkai



あの暗く淋しい深紅の瞳を
慰めてあげられたら
そう思った時にはもう
手遅れだった...



手を取り合って。
一生を貴方だけと誓って。
けれどそれは本当の幸せの形なんだろうか。
報われない片想い、というものはどうにも苦しくて。
そして、面倒臭い。
捨ててしまえたら楽なんだろうな。
きっと。
けれど諦めきれないのは、彼の瞳が切ないから。
痛々しくて。
彼はいつ、涙を流すのだろうと思った。
きっと彼は知らないのだろう。
涙の流し方を。
傷の癒し方を。
それを、教えてあげられたらいいのに。
ああ、彼の存在すべてを包み込むように。
すべての傷つけるものから守ることができたら。
こんなにも嬉しいことはないのに。
彼が望むなら。
死も生も。
望むままに操るのに。
彼は見ない。
見ないまま、自己を見つめている。
違うのに。
独りではないのに。
こっちを見てほしい。
こんなにも、貴方を気に掛けている人がいるのだと。
気付いて欲しい。
そうすれば、この胸の痛みは消えるだろう。
彼が自分を痛めつけるように他の誰かを想う姿を見たくない。


「貴方が好きです」


どんな想いで告げたのか。
彼は気付いただろうか。
伝わるといいと思った。
誰かが他者を想う、という行為は痛みを伴うのだと。
こんな想いは、花喃に抱いたものとも違っていて。
彼の痛みは自分の痛みで。
彼の代わりに彼の痛みをすべて身代わりに受けて。
それをしても、まだ足りない。


「貴方の痛みが癒えることをこんなにも願っているんです」


どうしたら、伝わるのだろう。
どうしたら気付いてもらえるのだろう。
言葉を尽くしても。
温もりを伝えても。
それでもまだ、伝わらないのなら。
どうやって、誓えばいいのだろう。
きっと、ずっと。
死ぬまで、死んでしまっても。
彼が命を落としても、その後も。
ずっと彼だけを想っていると。
それだけの強さで、激しさで想っているのだと。
どうしたら、伝わるのだろう...。



【Fin.】



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2008/03/20 UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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