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疾走



彼に向けて駆けていく
向かう先があることの幸福



雨が止んだ。
降り続いていた雨が、止んだ。
たったそれだけのことなのに、笑みが零れるのは何故だろう。
雨は嫌いだけれど。
その後は必ず綺麗な青空を見せてくれるから。
だから、大丈夫。


「三蔵、雨止んだ!」


いつもはそっと入っていく部屋に、わざと大声をかけてから入る。
ここは暗くて、怖いけれど。
三蔵がいれば大丈夫。
いつだって、暖かくなれる。


「煩え」
「外、虹出てるよ?」


めげずに続けると、溜息とともに暖かい手が下りてくる。
くしゃくしゃにされた髪の毛。
でも、気にしない。
これは彼の優しさだから。


「ずっとこんな風に見られるといいな」


窓に並んで腰掛けて虹を見上げる。
零れる笑みが抑えきれなくて。
嬉しい。
駆け出してしまいそうだ。


「…」


ふわ、と頬に下りてきた羽のような温もり。
驚いて顔を上げると、輝く朝焼けの瞳。
綺麗だな、と思って黙っていると、今度は唇の上に、ふわり。


ずっと、こんな風に、暖かい場所にいたい。
だから、ずっと、駆けていく。
ここに向けて。


【Fin.】


後書


咲羅さまキリリク、三空甘々…のつもりです。
最初書いていたのがちょっと暗めだったので
急遽書き直しました。
良かったら貰ってやってくださいませ…。


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2008/03/20 再UP



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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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