彼は自分より年上で
きちんと働いていて
とても忙しくて
わかってる
わかってるんだけど
どうしても、思ってしまう
ねぇ、俺と仕事とどっちが大事なの?
部屋に入った途端、視界に入った光景に、思わずため息が出た。
(またか…)
いつもと変わらない自分の部屋。
窓際に机と、反対側にはパイプベッド。
箪笥と本棚があって、割と整理されている部屋。
その中央にソファと、壁際にテレビが置いてあって。
「三蔵」
「ん…」
そのソファの上に、よりにもよってお気に入りのソファの上に、座って寝ているのは滅多に逢えない年上の彼氏。
付き合いだしたのは1年前。
まだお互い学生同士で、今よりももっと逢えていた。
ちゃんと目を見ながら話をすることが出来た。
なのに、。
(疲れるのも分かるけどさ)
三蔵の大学卒業と同時に一緒に住むことになった。
働くようになったら、生活リズムが変わるから。
せめて朝と夜は逢えるようにって。
そう言ったのは彼だった。
(嘘つき)
食事は一緒に取れるようにと、2LDKを選んだのは彼。
自分はいつだって、彼の望むとおりにしてきたつもりだった。
なのに。
(いっつも自分の部屋に帰らないんだもんなぁ…)
溜息をつく。
片手に持った鞄を床に置き、代わりに夏掛けを手にする。
幾ら夏だと言っても、冷房の効いた部屋でそのままでいるのは危険すぎる。
「風邪引くよ」
「…悟空」
呼ばれて、驚いた。
でも見ると、まだ寝ている。
(寝言か…)
夢の中でもいい。
逢えるのなら。
(俺も寝ようっと)
ソファの足元に寄りかかって、もう一枚夏掛けを手にする。
彼の膝に頭を乗せて、瞼を閉じる。
夢の中でも、逢えるように。
(いつか聞いてやる)
どちらが大事かなんて、愚問すぎるけど。
聞かないと納まらない気持ちも分かって欲しい。
大事に想うからこそ。
(ねぇ、仕事と俺と、本当に大事なのは、どっち?)
選んで欲しい。
ただ、それだけ。
【Fin.】
後書
21400hit 伊藤りゅーなさまからのリクです
内容は【砂を吐きそうなくらい甘々ラブな三空】…のつもりだったのですが
が…おかしいなぁ…寝てる人がいる…
でも、私的には、寝言を言う三蔵様や、膝枕で寝る悟空が堪らなく甘い雰囲気だと思って!(泣)
こ…こんな感じでもいいでしょうか…ι
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2008/03/20 再UP
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