もうすぐ梅雨が明け、夏が近付く。
夏が過ぎれば、彼とはなかなか逢えなくなってしまう。
出会って半年。
まだ、なのか。
もう、なのか。
常に浮かべられた微笑みよりも、その奥にある素顔が知りたい。
そう想い始めたら、もう止まらなかった。
彼が、好きだ。
性さえも超えて。
その魂が、好きなのだ。
彼が彼である以上、どんなカタチでもこの想いは変わらない。
彼、不二周助は自分にとってそんな存在だ。
傍目にはごくありふれた先輩後輩という関係が崩れたのは、夏の近い、ある雨の日だった。
「君が好きだよ」
突然降り出した雨で部活が早く終わった日、そんな夢のような科白を聞かされた。
信じられなくて。
それ以上に、信じたくなくて。
だって先輩は、何にも捕らわれてはならないはずの存在で。
恋愛など、しないはずで。
「同情? そんなものはいらない」
どんな意味であれ、好かれている事実は嬉しいくせに、口をついて出るのはそんな憎まれ口だけだ。
「同情だと、思う?」
君はそんなにも賢いのに?
囁くように続けられた言葉は、唇の上にもたらされた。
柔らかな温もり。
心地好くて。
雨の音さえ気にならない。
「…嘘だ」
「なんで? 何故嘘だと思うんだい?」
「だって先輩は…」
すると、困ったように微笑みながら先輩は口を開いた。
「それなら逆に聞くけど、同情って、誰の誰に対する同情?
好きだという言葉で君が同情と受け取るってことは…僕は期待してもいいのかな」
なんて自信家なんだろう。
そんなにも判りやすかっただろうか。
顔が赤くなるのが自分でも判ってしまう。
「かわいいね。そんなところが好きなんだ。ねぇ、君は?」
好きだと、簡単に言えるならこんなに長い間苦しんでない。
信じても、いいのだろうか。
このまま逢えなくなってしまうよりは。
伝えてしまったほうが、いいのかもしれない。
「先輩、俺…」
夏が過ぎても離れたくはない。
だから、少しだけ素直になってみる。
先輩の仮面のような、どこか不安を与える微笑みが変わる。
本当に嬉しい、というような。
幸福を表すような。
そして、少し苦しい抱擁と、少し苦しい口付けが、素直になったことへのご褒美 。
雨はいつの間にかやんでいた。
梅雨が過ぎれば夏が来る。
そうして季節が過ぎ去っても、先輩は傍にいる。
ずっと……。
【Fin.】
後書
これはサイトの200ヒットを踏まれた瑞香由布さまからのリクエストです。
(ん? 日本語がおかしい??)
『テニスの王子様』から不二×リョでございます。
こ、こんな感じでいいかな? >瑞香さま
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サイトの200hitって、何年前だ…(恥)
当時は「テニスの王子様」を読んでいたんですよね
懐かしいです。。。
2008/03/20 再UP
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