溢れる想い。
堪えきれない涙。
もう、耐えられない。
書類を持ったまま、仮眠室へ駆け込む。
ドアに背中を預けて、そのまましゃがみこむ。
「……っ」
気付かれているだろうと思っていた。
気付かれていることを、知っていた。
けれど、こんな同情が欲しかったわけじゃない。
中途半端な態度なら、初めから何も無い方がいい。
体が欲しいわけじゃない。
心が欲しい。
それしか、いらない。
「…」
ドア越しに囁かれる名前。
体が震える。
今だけは、この声を聴きたくない。
この声で、名前を呼ばれたくない。
「なんでも、ないです。大丈夫です」
「っ」
苛立っていることが伝わる声。
表情が見えない分、感情はよく見えてくる。
(ごめんなさい)
「悪かった、」
謝らないで欲しい。
謝られてしまうと、心が痛い。
何の意味も無かったのだと痛感して。
心が、張り裂けそう。
(謝るのは、私のほうです)
ひとつ深呼吸をして、ドアを開ける。
すぐ目の前には、先輩が立っていて。
泣き腫らした目は隠せないけれど、頑張って笑みを浮かべる。
「ごめんなさい。これ出し忘れちゃいました」
「……」
書類を示しながら、廊下に出ようとする、と。
腕を、掴まれた。
「レノ先輩?」
「俺は、いつまで【先輩】なんだ、と」
言われている意味がよくわからなくて。
ただ、その瞳が哀しそうにも見えて。
だから、だから…。
「先輩は、先輩、ですよね」
望まれていることがわからなくて。
そう、答えた。
【Fin.】
後書
鈍いわけじゃないんです
痛いことが嫌いだから、
期待も何もしないんです
ただ、それだけなんです
よろしければ、ご感想などいただけましたら幸いですv
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2007/05/20 Wrote
2009/01/01 UP
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