Index  Menu  Main  Novel(SAIYUKI)  Novel(WJ/GAME)  Novel(etc) 

†Sign†



人を指し示す記号。
人を表す証。
それ以上でも、それ以下でもないと。
そう、思っていた。


『先輩は、先輩、ですよね』


あの時はあれしか言うことができなかった。
それ以外に何と言えばよかったのだろう。
何を望まれているのか分からなくて。
きっと、傷つけてしまった。


(あんなに哀しそうな色、初めて見た)


いつだって明るくて、奔放で。
自由で、優しくて、淋しがり屋で。
ずっと見てきたから知っている。
彼がどんなに繊細な人なのか。


(心が痛い)


彼が他の女の人と会話を交わすだけでも辛い。
その自由さが、彼の本質だとしても。
心が痛むのは止められない。
だから、望んでもいない。
この想いが叶うことなんて。


、どうしたんだ」
「ルード先輩…」


ほんの少しだけ、泣きたい気持ちになった。
止められなかった涙が、頬を伝った。


?!」
「…すみません…なんでも、ないんです」


手の甲で涙を拭う。
顔を上げて、ルード先輩を見上げる。
ほんの少し微笑んで、大丈夫だと告げる、と。
先輩のサングラスの向こう側の瞳が、何かを捕らえるのを、見た。


「先輩?」
「ルードぉ、お前、何、泣かせてんの、と」


背中に、誰かの気配。
誰か、なんて、分かりきっているけれど。
その独特の口調がなくても、分かることだけれど。


「あ、あの、これは、ルード先輩のせいじゃないんです。目にゴミが入って、それで…っ」


振り返ることが出来ない。
体が震えている。


「あ、私、ツォンさんに報告書出さなきゃいけないんです」


そのまま、逃げるように、二人の傍から離れる。
実際逃げてしまったのだけれど。


(だって…)


振り返ったら、彼が、どんな瞳で自分を見ているのか、見たくなくて。


(先輩は、先輩、です。大切な、人です)


心の底から大切だと、まだ、想いを告げることは出来ないけれど。



【Fin.】



後書


使いたいネタまで中々進みません(苦笑)
前にちらっと出た組織の話と、6章ネタをやりたいのですが。。。
困ったなぁ。。。ι



よろしければ、ご感想などいただけましたら幸いですv


web clap



2007/05/31 Wrote
2009/01/01 UP



Back
7-mori eyelid (©) Midori Yuki
inserted by FC2 system