いつだって、私は信じてきた。
いつだって、先輩を想ってきた。
なのに、真実はいつだって残酷で。
救いなんて無いんだと、思い知らされる。
「、どうしたの…一体」
「え?」
相当ぼんやりしていたらしく、気付くと心配そうな粟色の瞳が私を覗き込んでいた。
今が戦闘中でなくて良かったと、心底思う。
でなければ、今頃命はない。
そしてその事に対する同情は得られないのだ。
この、黒いスーツを着ているだけで。
「なんでもない、です」
「そう? 何かあったらすぐ言うのよ」
「ありがとうございます」
心配そうに何度もこちらを振り返りながら去っていく姿に、笑顔で手を振る。
心の痛みは、どんな薬も効かない。
そして誰かに話す事で癒せるものでもない。
それがよくわかっているから。
「次の任務だ、」
「はい」
「一緒に行くのは…」
「ツォンさん、一人で大丈夫です」
そんな風にツォンさんの言葉を遮ったのは、初めてだった。
だから、ツォンさんは、とても驚いていて。
勿論私も驚いていて。
けれど、一度発した言葉を覆す気はなくて。
「そうか。わかった」
気をつけて、という言葉に送られて、事務所を出る。
冷たい金属のドアを抜け、エレベーターに向かう途中。
響く足音。
振り返らなくても分かる。
この足音だけは。
独特のリズムで刻まれる音。
それはまるで彼自身の本質を表すようで。
「任務か、と」
「…はい」
誰に対しても本心を見せない。
何かに対して執着することのない。
「今回は長いようです」
「気をつけて行けよ、と」
「ありがとうございます」
言葉は優しいけれど。
その瞳は、どこまでも冷たい。
あの日からずっと、先輩はこの瞳で私を見る。
情などないのだと。
どんな瞬間にも、そんなものはありえないのだと。
「行ってきます」
だから、こうして交わされる言葉は、幻のようなものだ。
上辺だけの。
傷つくこともない。
傷つくわけがない。
(なのに何故だろう)
手首の銀の鎖が、とても重たくて。
とても冷たくて。
心に、突き刺さる。
【to be continued...】
後書代わりの戯言
一年以上振りの続編です
遅くなりまして申し訳ありませんι
公私共に多忙になったプラス、
機種変更をした為に、BCがプレイできなくなってしまったのです(泣)
けれど、毎月のように見て頂いている方がいらっしゃると判明し
これはもう、頑張って続きを書くべきだと思い、改めて書き綴ることにしました
これからは定期的に更新できるように致しますので
どうぞ宜しくお願い致します…!
よろしければ、ご感想などいただけましたら幸いですv
web clap
2008/12/26 Wrote
2009/01/01 UP
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