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†Crazy†



「あら、それ綺麗ね。どうしたの?」


あの日から一週間。
何もなかったように、私と先輩の関係は変わらない。
ただ、あのことを示すのは、左手首のブレスレットだけ。


「レノ先輩が作ってくださったんです。ここ、マテリアが入るんですよ」
「へぇ…いいわね。私も欲しいわ」


私と同じ頃にタークスに配属された、亜麻色の髪を持つ彼女は、とても女性らしく。
同性の私から見ても、美人の部類に入る。


(やっぱり髪伸ばそうかな)


射撃の際に邪魔になることから、髪は伸ばしていない。
そのことを後悔したことはなかったけれど。


「レノ先輩と言えば、、貴方知っていて?」
「何をですか?」
「とうとう本命を決めた、という話よ」
「そう、なんですか?」


一瞬の暗転。
呼吸をすることを忘れてしまう。
胸が、苦しい。


? 大丈夫?」
「だ、大丈夫です。ごめんなさい。私、用事思い出しました」
「あら、そう。では、またね」


事務所へ戻る彼女とは反対側へ足を進める。
目的地は特にない。
ただ、彼女から離れたかっただけ。


(頭、痛い…)


適当に目に付いた扉を開けて、中へ入る。
手探りで照明のボタンをつけると、そこは資料室だった。


「…ばかみたい」


その場で、蹲る。
もう、立ち上がる気力はない。
彼女の言葉が噂にしろ、真実にしろ。
私には関わる余地はない。
わかっている。
けれど、この虚脱感だけは、どうにもならない。


(言えばよかったのかな)


すきだと。
初めて見たときから。
こんなにも心を奪われていて。
呼吸も出来なくなるほどにすきだと。


(言っていたら、こんな思いは、しなくて済んだのかな)


「せんぱい…すきです…」


小さく呟いた声は、空虚な部屋に響いて、消えた。
誰にも届かずに。



【Fin.】



後書


なんだか痛い展開になってきましたね
気持ちいいくらいです
この後の展開は多分、皆様がご想像されている通りかと思いますが
(何と言っても、一応レノ短ですし)
痛い文章が大好きなので甘い展開になるのがいつなのかは不明。。。(苦笑)



よろしければ、ご感想などいただけましたら幸いですv


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2007/05/04 Wrote
2009/01/01 UP


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7-mori eyelid (©) Midori Yuki
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